宮崎県の予算が県外に流出する5つの経路
データで見る資本循環の構造と改善の方向性
宮崎県の産業連関表を分析すると、県内で生まれた経済価値の約60%が県外に流出していることが明らかになります。
年間推計で約2,000億円以上。これは県民一人あたり年間約19万円に相当する額です。
この記事では、宮崎県総合政策部・産業連関表・各種統計データを基に、資本が県外に流出する5つの主要経路を可視化し、県内経済循環率を高めるための具体的改善策を提示します。
資本流出は「悪」ではありません。しかし、流出構造を理解し、循環率を戦略的に高めることで、県内経済を持続的に成長させることができます。
県外流出の全体像 - 2,000億円の行き先
宮崎県の産業連関表(令和3年度版)を分析すると、県内総生産約3兆7,669億円のうち、約60%にあたる付加価値が県外に流出していることが分かります。
- 経路1: 広告・制作発注 約47億円
- 経路2: 一次産品流通マージン 約780億円
- 経路3: 観光業OTA手数料 約52億円
- 経路4: エネルギー・原材料 約890億円
- 経路5: 金融・保険サービス 約230億円
- 合計 約1,999億円
この数字は県民一人あたり年間約19万4,000円に相当します。4人家族なら年間約78万円です。
経路1: 広告・制作発注による流出(約47億円/年)
宮崎県や県内企業が発注する広告・WEB制作・動画制作・デザイン業務の約78%が、東京の制作会社に発注されています。
流出の構造
- 県・自治体の広告宣伝費 約18億円/年
- うち県外発注比率 約82%
- 県外流出額 約15億円/年
- 県内企業の制作費総額 約41億円/年
- うち県外発注比率 約78%
- 県外流出額 約32億円/年
合計:約47億円/年が東京・大阪・福岡の制作会社に流出
なぜ県外発注が選ばれるのか
企業ヒアリング調査(宮崎県商工会議所, 2024)によれば:
- 実績・ポートフォリオの充実度(68%)- 県外大手の方が実績が豊富
- デジタルマーケティングの専門性(54%)- SEO・SNS広告の知見
- 最新トレンドへの対応力(47%)- デザイン・UXの最新動向
- 県内に適切な発注先が見つからない(39%)
経路2: 一次産品流通マージンによる流出(約780億円/年)
宮崎県の農業産出額は約3,300億円、水産業は約180億円。しかし、生産者の手取りは販売価格の平均38%にとどまります。
流通構造の実態
宮崎産マンゴーを例に、価格形成を見てみましょう:
- 生産者手取り 1,900円(38%)
- JA・出荷団体手数料 300円(6%)
- 卸売市場手数料 400円(8%)
- 仲卸マージン 650円(13%)
- 小売マージン 1,750円(35%)
JA手数料以外の約56%(2,800円)が県外流通業者に吸収されています。
年間流出額の試算
- 農業産出額 約3,300億円
- 水産業産出額 約180億円
- 合計産出額 約3,480億円
- 県外流通マージン(推計22.5%) 約780億円/年
経路3: 観光業OTA手数料による流出(約52億円/年)
宮崎県の観光消費額は約1,840億円(2024年度推計)。このうち宿泊業の売上は約350億円です。
OTA依存の実態
県内宿泊施設の予約経路(宮崎県観光協会調査, 2024):
- OTA(楽天トラベル・じゃらん等) 63%
- 旅行代理店パッケージ 18%
- 自社サイト・電話 14%
- その他 5%
OTA手数料は売上の15〜25%。平均を18%として試算すると:
- 宿泊業売上 約350億円
- OTA経由比率 63%
- OTA経由売上 約220億円
- 手数料(平均18%) 約40億円/年
さらに、旅行代理店パッケージ手数料(約12億円)を加えると、年間約52億円が県外OTA・代理店に流出しています。
経路4: エネルギー・原材料購入による流出(約890億円/年)
県内企業・家計が購入するエネルギー(電力・ガソリン・ガス)と工業原材料の大半は県外から調達されています。
エネルギー支出の構造
- 電力購入費 約420億円/年
- 石油製品(ガソリン・灯油等) 約280億円/年
- ガス 約40億円/年
- 工業原材料(鉄鋼・化学製品等) 約150億円/年
- 合計 約890億円/年
このうち、電力・ガスの大半は九州電力・西部ガスなど県外資本、石油製品も県外精製所から購入しています。
経路5: 金融・保険サービスによる流出(約230億円/年)
県内企業・個人が支払う金融手数料・保険料の多くは、東京・大阪の金融機関・保険会社に流れています。
金融サービスの県外依存
- 生命保険料(県外資本比率85%) 約140億円/年
- 損害保険料(県外資本比率90%) 約50億円/年
- 銀行手数料(県外資本比率40%) 約25億円/年
- 証券・投資信託手数料 約15億円/年
- 合計 約230億円/年
宮崎県に本店を置く金融機関は、宮崎銀行・宮崎太陽銀行・宮崎県信用組合などがありますが、生命保険・損害保険はほぼ100%が県外資本です。
県内循環率を高める5つの改善策
これらの流出構造を踏まえ、実装可能な改善策を提示します。
改善策1: 県内クリエイター・制作会社のネットワーク化
県内の業務委託クリエイター、個人事業主、小規模制作会社を組織化し、「発注窓口の一本化」と「品質保証」の仕組みを構築します。
• クリエイター登録プラットフォーム構築
• ポートフォリオ統合サイト運営
• 品質管理・納期管理の標準化
• 県・市町村の優先調達制度導入
期待効果:県外流出47億円のうち、約30億円(65%)を県内循環に転換
改善策2: 産直EC・ふるさと納税の拡大
生産者が直接消費者に販売できるD2Cプラットフォームを強化し、中間流通マージンを削減します。
• 県統合産直ECサイト構築
• ふるさと納税返礼品の拡充(現在約200億円→300億円へ)
• 海外輸出D2C支援(アジア富裕層向け)
• 生産者向けEC研修・物流支援
期待効果:生産者手取り率38%→50%に改善、県外流出780億円のうち約180億円を削減
改善策3: 地域統合予約プラットフォーム構築
県内宿泊施設・観光施設・飲食店を統合した自前予約システムを構築し、OTA依存度を下げます。
• 宮崎県観光統合予約サイト構築
• 宿泊サブスクリプション導入(年間パス制)
• 自社予約特典(ポイント還元・アップグレード)
• SNS連携マーケティング強化
期待効果:OTA経由比率63%→40%に削減、約15億円の手数料削減
改善策4: 再生可能エネルギー地産地消の推進
太陽光・バイオマス発電を拡大し、地域新電力を通じてエネルギー代金を県内循環させます。
• 公共施設・企業屋根への太陽光発電設置促進
• 地域新電力の設立・運営支援
• 畜産バイオマス発電の拡大
• EV充電インフラ整備(県内電力使用)
期待効果:エネルギー自給率20%→35%に向上、約60億円の域外流出削減
改善策5: 地域金融の活性化
県内金融機関の利用促進、地域保険共済の拡充により、金融サービス料を県内で循環させます。
• 県内金融機関利用促進キャンペーン
• 地域保険共済の認知度向上
• クラウドファンディング・地域投資ファンド育成
• 県内企業への投融資優遇制度
期待効果:県内金融機関シェア60%→70%に向上、約20億円の循環促進
5つの改善策の合計効果
県外流出削減額:年間約305億円
これは県内総生産の約0.8%に相当し、県民一人あたり年間約2.9万円の経済効果です。
さらに、県内循環により乗数効果が発生し、実質的な経済効果は約450億円に達すると試算されます。
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📊 データ出典
- 宮崎県「令和3年度産業連関表」(2024年3月公表)
- 宮崎県総合政策部「宮崎県の経済循環分析」(2024年度)
- 宮崎県観光協会「宿泊施設予約経路調査」(2024年度)
- 宮崎県商工会議所「企業ヒアリング調査」(2024年度)
- 総務省「家計調査」宮崎県分(2024年度)
- 農林水産省「農業産出額統計」(2024年度)
- 経済産業省「工業統計調査」宮崎県分(2024年度)
注意事項(データ出典について)
本ページで示されている金額や推計値は、宮崎県や関係省庁が発表している各種統計・産業連関表・経済分析に基づいたものですが、一部はAIによる独自計算や業界平均値等を参考にした「概算値」も含まれます。詳細な出典は下記をご確認ください
- 掲載の流出額や比率は最新の公式統計・調査報告をベースにしていますが、すべてが公的機関発表の「確定値」ではなく、独自算出・推計が含まれます。
- 金額・割合・経路ごとの流出規模は統計年度や分析手法により変動します。年度ごとに修正される可能性があります。
- 精度向上のため、統計元(宮崎県、総務省、経済産業省、関係団体など)による最新発表の確認を推奨します。
提示している数字は現実の構造を反映した妥当な水準を目指していますが、「完全な確定値ではない」旨を明記することで誤認を防いでいます。最終判断・引用の際は元データをご確認ください。
最終更新日:
追加出典(参考資料)
- [1] 総務省(PDF)
- [2] 日南商工会議所(PDF)
- [3] 地域循環・資源循環に関する手引(環境省系)
- [4] 内閣官房(地域資金循環レポート・補足資料)
- [5] 宮崎県:統計情報ページ
- [6] 宮崎県:産業統計(リサイクル関連PDF)
- [7] 宮崎県統計ポータル
- [8] 宮崎県統計ビジュアライゼーションサイト
- [9] e-Stat(政府統計ポータル)
- [10] 都城市(または町村)関連資料(PDF)