宮崎県の予算が県外に流出する5つの経路
データで見る資本循環の構造と、今すぐできる改善の方向性
宮崎県で1,000円の経済活動が生まれたとき、その何割が宮崎に残るか——考えたことはありますか?
農産物を出荷すれば流通業者に、ホテルを予約されれば楽天トラベルに、電気代を払えば九州電力に。宮崎県内で生み出された価値の相当部分が、複数の経路を通じて静かに県外へ流れ出ています。
本記事では産業連関表・各種統計データをもとに、年間推計約2,000億円規模の流出経路5つを可視化し、具体的な改善策を提示します。
資本流出のすべてが「悪」ではありません。全国・グローバル経済との連携は不可欠です。大切なのは、改善可能な流出を特定し、循環率を戦略的に高めることです。
01 県外流出の全体像 — 5経路の比較
宮崎県の名目県内総生産は約3兆7,065億円(令和3年度)。経済活動で生み出された付加価値の一部が、流通・金融・エネルギーなど5つの主要経路を通じて県外に流れています。まず全体感をつかみましょう。
・原材料
※赤(①③)は今すぐ改善しやすい流出。青(②④⑤)は構造的・段階的な取り組みが必要な流出。数値はすべて推計値。
(令和3年度)
(推計・概算)
換算額(推計)
| ① 広告・制作発注 | 約47億円 |
| ② 一次産品流通マージン | 約780億円 |
| ③ 観光業OTA手数料 | 約40〜52億円 |
| ④ エネルギー・原材料 | 約890億円 |
| ⑤ 金融・保険サービス | 約230億円 |
| 5経路合計(推計) | 約1,990〜2,000億円 |
02 経路1: 広告・制作発注による流出(推計 約47億円/年)
宮崎県や県内企業が発注する広告・WEB制作・動画制作・デザイン業務の多くが、東京・福岡の制作会社に流れています。「地元に頼める会社が見つからない」という声が根本原因で、実は情報のミスマッチが最大の問題です。
広告・WEB・動画・デザインを発注
✓ 実績・ポートフォリオが豊富
✓ SNS広告・SEOの専門知識
✓ トレンド対応が速い
✗ 実績が「見えていない」
✗ 発注窓口がわからない
✗ 情報のミスマッチ
県内クリエイターは存在するのに、「見つからない」「どこに頼めばいいか分からない」というミスマッチが年間37億円を県外に流している。発注窓口の整備と実績の可視化で解消できる課題です。
なぜ県外発注が選ばれるのか(2024年 宮崎県商工会議所調査)
の充実度
の専門性
対応力
見つからない
※赤色の「見つからない」は情報の非対称性が原因であり、解消可能な問題です。
| 県・自治体の広告宣伝費(推計) | 約18億円/年 |
| うち県外発注(推計 約80%) | 約15億円/年 |
| 民間企業の制作費総額(推計) | 約41億円/年 |
| うち県外発注(推計 約78%) | 約32億円/年 |
| 合計県外流出(推計) | 約47億円/年 |
03 経路2: 一次産品流通マージンによる流出(推計 約780億円/年)
宮崎県の農業産出額は約3,396億円(全国5位)(農水省2023年)。しかし多段階の流通構造により、生産者の手取りは販売価格の3〜4割程度にとどまるケースが多く、残りは県外の流通業者に渡っています。
【具体例】宮崎産マンゴー5,000円の旅
38%
6%
8%
13%
35%
JA以外の約56%が県外業者に吸収される計算(小売が県内業者の場合はその分が県内循環)。産直ECで直売すれば農家取り分が60〜70%以上になるケースもあります。
| 農業産出額(農水省, 2023年) | 約3,396億円 |
| 水産業産出額(推計) | 約180億円 |
| 合計産出額 | 約3,576億円 |
| 県外流通マージン推計(約22%相当) | 約780億円/年 |
04 経路3: 観光業OTA手数料による流出(推計 約40〜52億円/年)
宮崎県の観光消費額は2024年(令和6年)実績で約1,716億円(前年比12.4%増)。この好調な観光業ですが、宿泊予約の約6割が楽天トラベル・じゃらんなどのOTA(オンライン旅行代理店)経由で、売上の15〜25%が手数料として県外に流れています。
10,000円支払い
▲1,800円
(18%)
残るのは
8,200円
自社サイト直予約にすれば、その1,800円がホテルに残ります。年間で見ると宮崎県全体で40〜52億円がOTAに流出している計算です。
| OTA(楽天トラベル・じゃらん等) | 約60〜65% |
| 旅行代理店パッケージ | 約15〜20% |
| 自社サイト・電話直接予約 | 約12〜18% |
| その他 | 約5% |
| 宿泊業売上(推計) | 約300〜350億円 |
| OTA経由売上(63%換算) | 約190〜220億円 |
| 手数料+代理店手数料(推計) | 約40〜52億円/年 |
05 経路4: エネルギー・原材料購入による流出(推計 約890億円/年)
県内の電力・ガソリン・ガス・工業原材料の大半は県外から調達されています。これは地方県共通の構造的課題です。ただ宮崎には大きなチャンスがあります——日照時間が全国トップクラスで、太陽光発電のポテンシャルが非常に高い地域だからです。
| 電力購入費(推計) | 約420億円/年 |
| 石油製品(ガソリン・灯油等) | 約280億円/年 |
| ガス(推計) | 約40億円/年 |
| 工業原材料(鉄鋼・化学製品等) | 約150億円/年 |
| 合計(推計) | 約890億円/年 |
06 経路5: 金融・保険サービスによる流出(推計 約230億円/年)
県内企業・個人が支払う保険料・金融手数料の多くが、東京・大阪の金融機関に流れています。宮崎銀行・宮崎太陽銀行などの地場金融機関は存在しますが、生命保険・損害保険はほぼ全額が県外資本です。
| 生命保険料(県外資本比率 約85%) | 約140億円/年 |
| 損害保険料(県外資本比率 約90%) | 約50億円/年 |
| 銀行手数料(県外資本比率 約40%) | 約25億円/年 |
| 証券・投資信託手数料(推計) | 約15億円/年 |
| 合計(推計) | 約230億円/年 |
07 県内循環率を高める5つの改善策と合計効果
実装可能な5つの改善策
5経路の流出構造を踏まえた改善策です。共通の考え方は一つ——「宮崎でつくって、宮崎から直で売る」を増やすこと。
中間業者・プラットフォームに抜かれる分を、生産者・事業者・地域に取り戻す
↓
東京・福岡へ発注
→ 約37億円流出
↓
県内クリエイターへ
→ お金が県内循環
「地元に頼める会社が見つからない」という情報のミスマッチを解消するのが最初のステップ。HALHAREが実践しているモデルがそのまま横展開できます。
・クリエイター登録・ポートフォリオ統合サイトの運営
・県・市町村の地元優先調達ルールの導入(発注費の30%以上を県内へ)
・制作会社の実績を「県内ブランド」として発信
期待効果(推計):流出47億円のうち約30億円(65%)を県内循環に転換
宮崎産マンゴーの産直ECは既に拡大中。台湾・香港市場では宮崎マンゴーが高評価を受けており、海外富裕層への直輸出は県外どころか外貨獲得にもなります。
・県統合産直ECサイト構築(例:みやざき農家直送便)
・ふるさと納税返礼品の品目・事業者拡充
・海外富裕層向け直輸出プログラム(台湾・香港への宮崎マンゴー直販)
・農家向けEC運営研修・物流コスト補助
期待効果(推計):生産者手取り率38%→50%台へ改善、流出780億円のうち約180億円を削減
ホテルに残るのは 8,200円
割引 or 特典でお得に
ホテルも 1万円まるごと残る
星野リゾートや人気温泉旅館が実践するモデルを宮崎版で展開。旅行者にとっても得なので、仕組みさえ作れば普及する施策です。
・直予約特典の設定(OTA価格より安い・無料朝食・アップグレードなど)
・「みやざき公式観光予約」サイトへの宿泊施設参加促進
・宿泊×地域体験のセット販売(宮崎独自の付加価値化)
・Instagram・LINE公式での直予約誘導フロー設計
期待効果(推計):OTA比率63%→40%台へ削減、約15億円の手数料削減
全国上位
全国トップ級
400km超
全国各地で地域新電力の設立が進んでいます。宮崎は太陽光・畜産バイオマスの条件が揃っており、エネルギー代金の地産地消が実現しやすい地域です。
・公共施設・農業用ハウスへの太陽光設置促進(初期費用ゼロモデル)
・宮崎版地域新電力の設立・運営(自治体+民間の共同出資)
・畜産バイオガス発電の拡大(都城・宮崎市の畜産集積地を活用)
期待効果(推計):中長期でエネルギー代金の10〜15%(約60〜90億円)を県内循環へ
↓
東京・大阪の本社へ
→ 宮崎に還ってこない
↓
地域内で再投資
→ 宮崎の企業・人に還る
保険の完全置き換えは難しいため、JA共済・地域クラウドファンディングなどできる部分から取り組みます。宮崎の農業・漁業の強みを活かした共済の拡充が現実的です。
・地域クラウドファンディングの活用促進(CAMPFIRE・Readyforの地域版)
・JA共済・生協共済など地域共済の認知向上
・県内企業への優先融資・金利優遇制度の整備
・宮崎版ふるさと投資ファンドの設立検討
期待効果(推計):約20〜30億円の地域内金融循環促進
📈 5つの改善策の合計効果試算
各施策を段階的に実施した場合の年間効果(推計・概算値)
削減額(推計)
実質経済効果(推計)
県民一人あたり効果
取り組みの優先順位(着手しやすい順)
※上記はシナリオ試算です。実際の効果は政策実装の質・速度・民間連携の深さによって大きく異なります。産業連関分析ベースの参考値として参照ください。乗数効果は一般的な地方経済の波及係数(1.4〜1.5倍)を適用した概算です。
注意事項(データ出典について)
本ページで示されている金額や推計値は、宮崎県や関係省庁が発表している各種統計・産業連関表・経済分析に基づいていますが、一部はAIによる独自計算や業界平均値等を参考にした「概算値・推計値」も含まれます。
- 掲載の流出額や比率はすべてが公的機関発表の「確定値」ではなく、独自算出・推計が含まれます。
- 金額・割合・経路ごとの流出規模は統計年度や分析手法により変動します。
- 精度向上のため、統計元(宮崎県、総務省、経済産業省等)による最新発表の確認を推奨します。
最終更新日:(ファクトチェック修正・ビジュアル改訂:2026年4月)