宮崎県の予算が県外に流出する5つの経路 | HALHARE
宮崎経済リブランディング

宮崎県の予算が県外に流出する5つの経路

データで見る資本循環の構造と、今すぐできる改善の方向性

📅 2025年11月 ⏱️ 読了時間: 約10分 📊 データ: 最新統計に基づく
⚠️
ファクトチェック注記:本記事で示す金額・比率は宮崎県産業連関表・各省庁統計をベースにした推計値・概算値を含みます。観光消費額は公式データ(2024年:約1,716億円)に基づき修正済み。県内総生産は令和3年度公表値(名目3兆7,065億円)を使用。一部数値は研究者・業界調査からの援用です。引用・意思決定の際は元データをご確認ください。

宮崎県で1,000円の経済活動が生まれたとき、その何割が宮崎に残るか——考えたことはありますか?

農産物を出荷すれば流通業者に、ホテルを予約されれば楽天トラベルに、電気代を払えば九州電力に。宮崎県内で生み出された価値の相当部分が、複数の経路を通じて静かに県外へ流れ出ています。

本記事では産業連関表・各種統計データをもとに、年間推計約2,000億円規模の流出経路5つを可視化し、具体的な改善策を提示します。

資本流出のすべてが「悪」ではありません。全国・グローバル経済との連携は不可欠です。大切なのは、改善可能な流出を特定し、循環率を戦略的に高めることです。


01 県外流出の全体像 — 5経路の比較

宮崎県の名目県内総生産は約3兆7,065億円(令和3年度)。経済活動で生み出された付加価値の一部が、流通・金融・エネルギーなど5つの主要経路を通じて県外に流れています。まず全体感をつかみましょう。

📊 5経路の県外流出額(年間推計)— 規模比較
④ エネルギー
・原材料
約890億円
② 流通マージン
約780億円
⑤ 金融・保険
約230億円
① 広告・制作
約47億円 今すぐ改善可
③ OTA手数料
約46億円 今すぐ改善可

赤(①③)は今すぐ改善しやすい流出。青(②④⑤)は構造的・段階的な取り組みが必要な流出。数値はすべて推計値。

約3.7兆円
名目県内総生産
(令和3年度)
約2,000億円
5経路の流出合計
(推計・概算)
約19万円
県民一人あたり
換算額(推計)
📋 5経路の流出構造まとめ
① 広告・制作発注 約47億円
② 一次産品流通マージン 約780億円
③ 観光業OTA手数料 約40〜52億円
④ エネルギー・原材料 約890億円
⑤ 金融・保険サービス 約230億円
5経路合計(推計) 約1,990〜2,000億円
重要な視点:すべての流出を止めることは不可能ですし、必要もありません。大切なのは、特にすぐ改善できる①と③に着手し、段階的に②⑤④と取り組む優先順位の設計です。

02 経路1: 広告・制作発注による流出(推計 約47億円/年)

宮崎県や県内企業が発注する広告・WEB制作・動画制作・デザイン業務の多くが、東京・福岡の制作会社に流れています。「地元に頼める会社が見つからない」という声が根本原因で、実は情報のミスマッチが最大の問題です。

🔍 広告費の流れ — 宮崎のお金は今どこへ行っているか
💼 宮崎の企業・行政
広告・WEB・動画・デザインを発注
🏙️
東京・福岡の制作会社へ
約80%
=約37億円が県外へ流出
選ばれる理由:
✓ 実績・ポートフォリオが豊富
✓ SNS広告・SEOの専門知識
✓ トレンド対応が速い
🌄
県内クリエイターへ
約20%
=約10億円が県内に残る
選ばれない本当の理由:
✗ 実績が「見えていない」
✗ 発注窓口がわからない
✗ 情報のミスマッチ
💡
実は「実力の差」ではなく「認知の差」が問題。
県内クリエイターは存在するのに、「見つからない」「どこに頼めばいいか分からない」というミスマッチが年間37億円を県外に流している。発注窓口の整備と実績の可視化で解消できる課題です。

なぜ県外発注が選ばれるのか(2024年 宮崎県商工会議所調査)

📊 県外発注の理由(複数回答)
実績・ポートフォリオ
の充実度
68%
デジタルマーケ
の専門性
54%
最新トレンドへの
対応力
47%
県内に発注先が
見つからない
39%

※赤色の「見つからない」は情報の非対称性が原因であり、解消可能な問題です。

📊 広告制作費の流出内訳(推計)
県・自治体の広告宣伝費(推計)約18億円/年
うち県外発注(推計 約80%)約15億円/年
民間企業の制作費総額(推計)約41億円/年
うち県外発注(推計 約78%)約32億円/年
合計県外流出(推計)約47億円/年
ポイント:「見つからない」という39%の理由は、クリエイターの情報発信と組織化で解決できます。HALHAREのようなプラットフォームが機能すれば、この流出の多くは即座に改善できる数少ない経路です。

03 経路2: 一次産品流通マージンによる流出(推計 約780億円/年)

宮崎県の農業産出額は約3,396億円(全国5位)(農水省2023年)。しかし多段階の流通構造により、生産者の手取りは販売価格の3〜4割程度にとどまるケースが多く、残りは県外の流通業者に渡っています。

【具体例】宮崎産マンゴー5,000円の旅

🥭 宮崎産マンゴー(小売価格5,000円)の価格内訳
農家
38%
JA
6%

8%
仲卸
13%
小売
35%
農家手取り 1,900円(38%)
JA手数料 300円(6%)
卸売市場 400円(8%)
仲卸 650円(13%)
小売 1,750円(35%)

JA以外の約56%が県外業者に吸収される計算(小売が県内業者の場合はその分が県内循環)。産直ECで直売すれば農家取り分が60〜70%以上になるケースもあります。

📊 一次産品の県外流出(年間推計)
農業産出額(農水省, 2023年)約3,396億円
水産業産出額(推計)約180億円
合計産出額約3,576億円
県外流通マージン推計(約22%相当)約780億円/年
注:産直EC・地場スーパー販売など県内完結の流通は含みません。多段階流通の外部依存部分の概算です。品目・チャネルにより大きく異なります。
改善の余地:宮崎産マンゴーの産直ECは実際に拡大中で、農家の手取り率改善事例も出ています。D2C・ふるさと納税・輸出直販の拡大で、中間流通を短縮し生産者手取り率を高めることが可能です。

04 経路3: 観光業OTA手数料による流出(推計 約40〜52億円/年)

宮崎県の観光消費額は2024年(令和6年)実績で約1,716億円(前年比12.4%増)。この好調な観光業ですが、宿泊予約の約6割が楽天トラベル・じゃらんなどのOTA(オンライン旅行代理店)経由で、売上の15〜25%が手数料として県外に流れています。

🏨 宿泊1泊1万円の予約でOTAに流れるお金
旅行者が
10,000円支払い
OTA手数料
▲1,800円
(18%)
ホテルに
残るのは
8,200円

自社サイト直予約にすれば、その1,800円がホテルに残ります。年間で見ると宮崎県全体で40〜52億円がOTAに流出している計算です。

📊 宿泊予約の経路別比率(推計)
OTA(楽天トラベル・じゃらん等)約60〜65%
旅行代理店パッケージ約15〜20%
自社サイト・電話直接予約約12〜18%
その他約5%
📊 OTA手数料による県外流出(推計)
宿泊業売上(推計)約300〜350億円
OTA経由売上(63%換算)約190〜220億円
手数料+代理店手数料(推計)約40〜52億円/年
改善の余地:星野リゾートなど大手は自社予約比率50%以上を実現しています。宮崎でも自社予約サイトの強化と「直予約特典」(無料アップグレード、食事付きプランなど)の設定で、段階的にOTA依存を下げることが可能です。

05 経路4: エネルギー・原材料購入による流出(推計 約890億円/年)

県内の電力・ガソリン・ガス・工業原材料の大半は県外から調達されています。これは地方県共通の構造的課題です。ただ宮崎には大きなチャンスがあります——日照時間が全国トップクラスで、太陽光発電のポテンシャルが非常に高い地域だからです。

📊 エネルギー・原材料の県外流出(推計)
電力購入費(推計)約420億円/年
石油製品(ガソリン・灯油等)約280億円/年
ガス(推計)約40億円/年
工業原材料(鉄鋼・化学製品等)約150億円/年
合計(推計)約890億円/年
☀️ 宮崎のエネルギー自給ポテンシャル
☀️
日照時間
全国上位
太陽光発電に最適
🐄
畜産規模
全国トップ級
バイオガス発電に活用可
🌊
海岸線
400km超
洋上風力の将来性あり
改善の余地:地域新電力の設立、公共施設・農業用ハウスへの太陽光設置、畜産バイオマス発電の拡大。宮崎はエネルギーの地産地消に向けた条件が整っており、電気代を地域内で循環させる仕組みづくりが急務です。

06 経路5: 金融・保険サービスによる流出(推計 約230億円/年)

県内企業・個人が支払う保険料・金融手数料の多くが、東京・大阪の金融機関に流れています。宮崎銀行・宮崎太陽銀行などの地場金融機関は存在しますが、生命保険・損害保険はほぼ全額が県外資本です。

📊 金融・保険の県外流出(推計)
生命保険料(県外資本比率 約85%)約140億円/年
損害保険料(県外資本比率 約90%)約50億円/年
銀行手数料(県外資本比率 約40%)約25億円/年
証券・投資信託手数料(推計)約15億円/年
合計(推計)約230億円/年
改善の余地:農協・漁協・生協の共済(JA共済など)は実質的に地域内循環に近い仕組みです。また地域クラウドファンディングの活用、県内金融機関への預金集中なども有効です。

07 県内循環率を高める5つの改善策と合計効果

実装可能な5つの改善策

5経路の流出構造を踏まえた改善策です。共通の考え方は一つ——「宮崎でつくって、宮崎から直で売る」を増やすこと。

💡 改善の基本思想
🌄
宮崎でつくる
🔗
中間を省く
💰
県内にお金が残る

中間業者・プラットフォームに抜かれる分を、生産者・事業者・地域に取り戻す

1 県内クリエイターを「見える化」して、地元で完結させる
❌ 今の状態
宮崎の企業

東京・福岡へ発注
→ 約37億円流出
✅ 目指す状態
宮崎の企業

県内クリエイターへ
→ お金が県内循環

「地元に頼める会社が見つからない」という情報のミスマッチを解消するのが最初のステップ。HALHAREが実践しているモデルがそのまま横展開できます。

具体的な施策:
・クリエイター登録・ポートフォリオ統合サイトの運営
・県・市町村の地元優先調達ルールの導入(発注費の30%以上を県内へ)
・制作会社の実績を「県内ブランド」として発信

期待効果(推計):流出47億円のうち約30億円(65%)を県内循環に転換
2 農家が「直接」全国・世界に売る仕組みをつくる
❌ 今の多段階流通(農家手取り38%)
農家
JA
卸売市場
仲卸
小売
消費者
✅ 産直EC・直輸出(農家手取り60〜70%以上)
農家
産直EC / ふるさと納税
全国・台湾・香港の消費者

宮崎産マンゴーの産直ECは既に拡大中。台湾・香港市場では宮崎マンゴーが高評価を受けており、海外富裕層への直輸出は県外どころか外貨獲得にもなります。

具体的な施策:
・県統合産直ECサイト構築(例:みやざき農家直送便)
・ふるさと納税返礼品の品目・事業者拡充
・海外富裕層向け直輸出プログラム(台湾・香港への宮崎マンゴー直販)
・農家向けEC運営研修・物流コスト補助

期待効果(推計):生産者手取り率38%→50%台へ改善、流出780億円のうち約180億円を削減
3 「直予約」を旅行者にとってもお得にする
❌ OTA経由(1泊1万円の場合)
OTA手数料 ▲1,800円 が県外へ
ホテルに残るのは 8,200円
✅ 直予約(特典付き)
手数料ゼロ+ゲストは
割引 or 特典でお得に
ホテルも 1万円まるごと残る

星野リゾートや人気温泉旅館が実践するモデルを宮崎版で展開。旅行者にとっても得なので、仕組みさえ作れば普及する施策です。

具体的な施策:
・直予約特典の設定(OTA価格より安い・無料朝食・アップグレードなど)
・「みやざき公式観光予約」サイトへの宿泊施設参加促進
・宿泊×地域体験のセット販売(宮崎独自の付加価値化)
・Instagram・LINE公式での直予約誘導フロー設計

期待効果(推計):OTA比率63%→40%台へ削減、約15億円の手数料削減
4 エネルギーを「買う」から「地域でつくって使う」へ
宮崎のエネルギー自給ポテンシャル
☀️
日照時間
全国上位
太陽光発電に最適
🐄
畜産規模
全国トップ級
バイオガス発電に活用可
🌊
海岸線
400km超
洋上風力の将来性あり
これらを使えば、電気代が「外に出ていくお金」から「地域内で回るお金」になる

全国各地で地域新電力の設立が進んでいます。宮崎は太陽光・畜産バイオマスの条件が揃っており、エネルギー代金の地産地消が実現しやすい地域です。

具体的な施策:
・公共施設・農業用ハウスへの太陽光設置促進(初期費用ゼロモデル)
・宮崎版地域新電力の設立・運営(自治体+民間の共同出資)
・畜産バイオガス発電の拡大(都城・宮崎市の畜産集積地を活用)

期待効果(推計):中長期でエネルギー代金の10〜15%(約60〜90億円)を県内循環へ
5 「地域でお金を回す」金融の仕組みをつくる
❌ 今の流れ
保険料・手数料

東京・大阪の本社へ
→ 宮崎に還ってこない
✅ 目指す流れ
地域共済・地元銀行

地域内で再投資
→ 宮崎の企業・人に還る

保険の完全置き換えは難しいため、JA共済・地域クラウドファンディングなどできる部分から取り組みます。宮崎の農業・漁業の強みを活かした共済の拡充が現実的です。

具体的な施策:
・地域クラウドファンディングの活用促進(CAMPFIRE・Readyforの地域版)
・JA共済・生協共済など地域共済の認知向上
・県内企業への優先融資・金利優遇制度の整備
・宮崎版ふるさと投資ファンドの設立検討

期待効果(推計):約20〜30億円の地域内金融循環促進

📈 5つの改善策の合計効果試算

各施策を段階的に実施した場合の年間効果(推計・概算値)

約285〜305億円
年間の県外流出
削減額(推計)
約400〜450億円
乗数効果込みの
実質経済効果(推計)
約40万円
実現した場合の
県民一人あたり効果

取り組みの優先順位(着手しやすい順)

1
まず今すぐ:広告・制作の地元発注率を上げる(施策①) 制度設計が最もシンプルで、即効性が高い。県・市町村の調達ルール改正から着手。
2
1〜2年目:OTA依存低減(施策③)+産直EC拡大(施策②) 既存インフラを活用しながら直販比率を段階的に引き上げ。
3
3〜5年目:地域金融(施策⑤)+再エネ地産地消(施策④) 初期投資と組織づくりが必要だが、長期的な効果が最も大きい経路。

※上記はシナリオ試算です。実際の効果は政策実装の質・速度・民間連携の深さによって大きく異なります。産業連関分析ベースの参考値として参照ください。乗数効果は一般的な地方経済の波及係数(1.4〜1.5倍)を適用した概算です。

注意事項(データ出典について)

本ページで示されている金額や推計値は、宮崎県や関係省庁が発表している各種統計・産業連関表・経済分析に基づいていますが、一部はAIによる独自計算や業界平均値等を参考にした「概算値・推計値」も含まれます。

  • 掲載の流出額や比率はすべてが公的機関発表の「確定値」ではなく、独自算出・推計が含まれます。
  • 金額・割合・経路ごとの流出規模は統計年度や分析手法により変動します。
  • 精度向上のため、統計元(宮崎県、総務省、経済産業省等)による最新発表の確認を推奨します。

最終更新日:(ファクトチェック修正・ビジュアル改訂:2026年4月)

追加出典(参考資料)
  1. 総務省(PDF)
  2. 日南商工会議所(PDF)
  3. 地域循環・資源循環に関する手引(環境省)
  4. 内閣官房(地域資金循環レポート補足)
  5. 宮崎県:統計情報ページ
  6. 宮崎県統計ポータル
  7. e-Stat(政府統計ポータル)