広報・採用の一貫設計

プロローグ:なぜ今、「設計」なのか

宮崎には、語るべき価値がある──美しい自然、誠実なものづくり、温かい人柄。しかし、その価値は十分に伝わっているだろうか。

採用難、人材流出、ブランド認知不足。地方企業が抱える課題の本質は、情報不足ではない。情報を価値に翻訳し、適切な形で届ける"設計"が欠けているのだ。

SNS更新、求人掲載、ホームページ制作──これらがバラバラに存在する限り、効果は限定的だ。広報と採用、ブランディングと顧客接点は本来、一本の物語として設計されるべきである。

HALHAREが提唱する「広報・採用の一貫設計」とは、企業の存在意義をデジタル時代の言語で翻訳し、持続可能な成長を実現する思考法である。

第1章:地方企業が直面する「翻訳の欠如」

1-1. 情報過多時代の逆説

地方企業の真の問題は「情報が多すぎること」ではなく「価値が正しく翻訳されていないこと」だ。

宮崎市の中小製造業A社は、創業50年の技術力を持ちながら新卒採用で苦戦していた。求人サイトには「アットホームな職場」という定型文のみ。技術への誇り、描く未来、職人の想い──物語が欠けていた。

顧客は「背景」を、求職者は「意味」を求めている。にもかかわらず、多くの企業は断片的な情報発信に留まっている。

1-2. デジタルマーケティングの「設計思考」

ここで必要なのが、一貫設計の思考である。

記事や動画で共感を生み、広告で拡散し、CVページで関係を深める。この流れが途切れなく続くとき、企業は「選ばれる存在」になる。

第2章:宮崎県で参考にできるデジタルマーケティング事例

2-1. 日南市・古民家再生プロジェクト

ポイント:完成品だけでなく、職人の汗、試行錯誤、地域との絆──「物語の過程」が首都圏の若年層や体験型観光客を惹きつけた。

2-2. 宮崎牛SNS＆インフルエンサー施策

2-3. 観光業・予約システム最適化

第3章:全国の先進事例から学ぶ、地方DXの可能性

共通点:

• 地域の強みを物語化
• 複数チャネルを連動
• 顧客行動を最短導線で獲得

この構造は、業種・地域を問わず再現可能である。

第4章:全業種で使える「一貫型デジタルマーケ設計」

ステップ1:情報整理

「誰に、何を、なぜ伝えるのか」を明確化。ターゲット、差別化ポイント、強み・弱みを徹底的に棚卸し。現場の声、顧客の声を集めることが重要。

ステップ2:伝達ストーリー

整理した情報を物語化。商品紹介ではなく、「なぜ生まれたのか」「誰がどんな想いで作っているのか」を語る。ショート動画は10〜40代に最も刺さる手段。"完璧さ"より"リアルさ"が評価される。

ステップ3:拡散設計

Google広告、Instagram広告、LINE広告でターゲット層へピンポイント配信。地域インフルエンサーとの連携で認知の"面"を広げる。

ステップ4:顧客経路最適化

認知から購買・応募までの導線を最短化。

• スマホ最適化必須
• フォーム項目は最小限
• LINE公式で24時間対応

ユーザーは「面倒」と感じた瞬間、離脱する。摩擦を徹底排除せよ。

ステップ5:効果測定

Googleアナリティクス、SNSインサイト、予約・問い合わせ数、広告ROIを月次で追跡。「やりっぱなし」が最大の失敗である。

第5章:広報と採用を統合する思考

5-1. 広報と採用は、同じ物語の表裏

企業が発信する「ブランドストーリー」は、顧客だけでなく求職者も見ている。求職者は顧客以上に企業の"本質"を見抜こうとする。

根底にあるのは同じ企業理念・ビジョン・文化。広報と採用が別々のメッセージを発信すれば、ブランドは分裂する。

5-2. オウンドメディアは「採用広報」の最強ツール

社員インタビュー動画、職場の日常、社長コラム、プロジェクトの裏側──これらは求人サイトでは伝えられない「リアルな働く姿」を届ける。そして顧客に対しても、企業の信頼性・透明性を高める。

5-3. LINE公式・SNSで「エントリー前接点」を作る

若年層は応募前に企業を徹底的に調べる。LINE公式やInstagram DMでの「カジュアル相談窓口」が有効だ。「応募する前に、ちょっと話を聞いてみたい」ニーズに応え、エントリー障壁を下げミスマッチを防ぐ。

第6章:未来を見据えた、地方企業のデジタル戦略

6-1. AIとデジタルツールの民主化

ChatGPT、Canva、動画編集アプリ──かつて専門家しか使えなかったツールが誰でも使える時代に。予算や人材が限られていても、設計さえしっかりしていれば、高品質なコンテンツを内製できる。

6-2. 「情報量」ではなく「設計力」が差別化要素

今後、情報量での競争は無意味になる。重要なのは「誰に、何を、どう届けるか」を設計する力だ。物語の一貫性、導線の最適化、PDCAサイクル──「設計の質」が企業の成長を左右する。

6-3. 地域全体で「翻訳インフラ」を構築

HALHAREが目指すのは、宮崎全体で「価値を翻訳するインフラ」を構築すること。

• 企業・行政・教育機関が連携しデジタル人材を育成
• 地域メディア・クリエイターと企業をつなぐプラットフォーム
• 成功事例を共有し、地域全体で知見を蓄積

一社だけでなく、地域全体がデジタル時代に適応できる生態系を作る──それが持続可能な地方創生である。

第7章:宮崎という地域特性を踏まえた採用戦略

7-1. 宮崎の採用市場の構造的課題

宮崎県の有効求人倍率は全国平均をやや下回り、専門職・技術職での人材不足が顕著だ。しかし問題の本質は「人がいない」ことではなく、「マッチングの設計が機能していない」こと。

3つの構造的課題:

1. 情報の非対称性 – 企業の魅力が言語化・可視化されていない
2. 接点の不足 – 求人サイトと説明会だけでは不安は解消されない
3. ストーリーの欠如 – 「なぜこの会社で働くのか」が伝わっていない

7-2. 宮崎企業に最適化された採用導線設計

7-3. 宮崎企業の実践例

第8章:情報開示の順序 ── 候補者が離脱しない流れ

8-1. 候補者心理と情報開示のタイミング

採用活動はデートに似ている。段階的に信頼を深める必要がある。しかし多くの企業は、情報開示の順序を誤っている。

8-2. 離脱しない情報開示の4段階

内定承諾の決め手は、待遇ではなく「共感」だ。企業の理念やビジョンに共感し、チームの一員になりたいと思ったとき、候補者は入社を決断する。

第9章:広報×採用×事業の三位一体構造

9-1. なぜ「三位一体」なのか

多くの企業では、広報部・人事部・事業部が別々に動いている。しかしこれらは本来、同じ企業理念から派生する一体の活動だ。

9-2. HALHAREが実践する三位一体モデル

結果、HALHAREには「面白そう」「一緒にやりたい」と思う人材・企業が自然と集まる。広告費をかけずとも、共感ベースでコミュニティが拡大している。

まとめ:設計思考が、地方企業の未来を拓く

宮崎には、語るべき物語がある。しかし、それを適切に「設計」し「翻訳」し「届ける」技術が不足している。

広報・採用の一貫設計とは、その技術を体系化したものだ。

• 地域特性を踏まえた採用導線
• 候補者心理に沿った情報開示
• 広報×採用×事業の三位一体構造

これらを実践することで、宮崎の企業は「選ばれる存在」になる。そして一社だけでなく地域全体でこの設計思考を共有することで、宮崎は「デジタル時代に適応した持続可能な地方都市」へと進化していく。

エピローグ:物語は、すでにそこにある

宮崎には、語るべき物語がある。それは、商品カタログや求人票には載らない、人の想い、現場の熱、地域の誇りだ。

デジタルマーケティングの一貫設計とは、その物語を適切な形で翻訳し、必要な人へ届ける技術に他ならない。

HALHAREは、USAGI DUNGEONやUSAGI CLOUD COLLECTIVEという"物語の実験場"を通じて、この翻訳技術を磨き続けている。アート、デザイン、地域、デジタル──それらを融合させた「新しい価値創出の方法論」を、実践しながら探求している。

物語は、すでにそこにある。あとは、それを"見える形"にするだけだ。