地域・産業 | 2026.08.10 公開

宮崎経済の現在地と、これから分かれる二つの道

宮崎県の経済規模はここ数年、小幅ながら増加が続いている。一方で2025年、宮崎県は「転出超過の拡大幅」が全国で最も大きい県になった。産業構造には偏りがあるが、行政DXやふるさと納税では全国上位の実績もある。推測や独自試算ではなく、公表されている一次統計だけを土台に、宮崎の現在地とこれから選べる方向性を整理する。

この記事で分かること
・宮崎県の経済規模と産業構造が実際どうなっているか
・2025年の人口動態で何が起きたか、そして2050年時点の推計人口
・行政DXとふるさと納税という2つの実例から見える、宮崎の強みと弱み

結論

宮崎県の経済は、崩壊しているわけではない。県内総生産(名目)は令和4年度に3兆7,669億円で2年連続の増加となった。一方で2025年、宮崎県は前年に比べ「転出超過数の拡大幅」が全国で最も大きい県となり、人が出ていく勢いが全国で最も強まった1年だった。国の推計では、宮崎県の人口は2050年までに現在の107万人規模から約80万人へ、約4分の1減る見込みになっている。同時に、都城市の行政DXやふるさと納税の実績など、宮崎が全国上位に立っている分野も実在する。「全てが遅れている」という単純化も、「大きく成長している」という楽観も、どちらも事実とは違う。この記事では、公表されている一次統計だけを土台に、宮崎の現在地とこれから選べる方向性を整理する。

3.77兆円宮崎県内総生産(名目)
令和4年度・前年度比+1.3%・2年連続増加
拡大幅
全国1位
2025年、転出超過数の拡大幅が47都道府県で最大(+1,847人)
約80万人社人研推計(2023年12月公表)による2050年の宮崎県人口見込み
(2020年:107.0万人 → ▲25.5%)

※県内総生産:宮崎県「県民経済計算(令和4年度確報)」。転出超過:総務省「住民基本台帳人口移動報告 2025年結果」。人口推計:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」。

宮崎県経済の現在地――足元は横ばい〜微増

宮崎県の県内総生産(名目GDPの県内分)は、令和4年度時点で3兆7,669億円。前年度比+1.3%で、2年連続の増加となっている。これは全国GDPの0.64%にあたり、都道府県順位では39位にあたる規模だ。

2025年に起きた変化――転出超過の急拡大

総務省「住民基本台帳人口移動報告 2025年結果」によると、2025年は宮崎県を含む40道府県が転出超過だった。注目すべきは水準そのものより変化幅で、前年に比べて転出超過数が最も拡大したのが宮崎県(+1,847人)、国外との移動を含めた「社会減少数」の拡大幅が最も大きかったのも宮崎県(+2,124人)だった。これは「宮崎から人が減っている」という慢性的な事実に加えて、「その勢いが2025年に全国で最も強まった」という、より新しい・より具体的な警告シグナルだ。

このまま進むとどうなるか――人口の推計

国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が2023年12月に公表した「日本の地域別将来推計人口」によれば、宮崎県の人口は2020年の107.0万人から2050年までに約25.5%減少し、約80万人になる見込みだ。県の直近の推計人口(2026年3月時点)は約101.3万人で、すでに減少局面にある。共同通信の分析では、2050年時点で椎葉村・五ヶ瀬町・串間市など11市町村で生産年齢人口(15〜64歳)が2020年比で半数未満に落ち込むとされている。

なぜ若者は宮崎を離れるのか――大学生調査から見える理由

宮崎大学が2024年3月に公表した「若者の県外流出要因等調査結果」(県内大学生1,576件・県外大学生315件が回答)によると、就職先を選ぶ時に重視するポイントは県内大学生・県外大学生ともに「給与水準」が最も高く、県内大学生で78.0%、県外大学生で74.0%だった。次いで「福利厚生」(県内67.5%・県外68.3%)が続く。宮崎県外で働きたい理由でも「県外の方が給与水準が高いと思う」が最も高く、県内大学生で55.3%(うち県内の高校出身者に限ると68.7%)、県外大学生で67.9%に達した。給与水準への不満が、県外就職を選ぶ最大の要因になっている。

宮崎県の産業構造――農林水産業に強く偏った付加価値の作り方

宮崎県の産業構造は、全国と比べて第1次産業(農林水産業)の比率が高いのが最大の特徴だ。県の分析でも「九州各県と比較して、宮崎県は県内総生産に占める農林水産業の割合が特に高い」ことが明記されている。

区分県内総生産に占める割合主な内訳(参考)
第1次産業(農林水産業)5.3%全国平均より高い水準。産業特化係数5.0と、他産業と比べ突出
第2次産業23.7%うち製造業17.3%、建設業6.3%
第3次産業70.4%うち卸売・小売業9.9%、不動産業10.2%、保健衛生・社会事業11.2%、公務6.8%

※出典:地方公共団体金融機構「令和2年10月 宮崎県の概要・財政状況」(平成29年度県民経済計算ベース)。より新しい令和3年度確報では、農業単体の生産額は1,342億円・県内総生産の3.6%。労働生産性の特化係数では農林水産業・運輸郵便業が全国・九州平均を上回る一方、金融保険業・卸売小売業は下回る(宮崎県「令和4年度県民経済計算から見た宮崎県経済の特徴」)。

宮崎がこれから選べる2つの方向性(HALHAREの見解)

ここから先は統計ではなく、上記の事実を踏まえたHALHAREの見解であることを明記しておく。将来を断定する予測ではなく、選択肢の整理として読んでほしい。

前提現状延伸シナリオ集中対応シナリオ
人口・転出転出超過の拡大傾向が続き、社人研推計に沿って2050年に約80万人へ近づく採用・雇用の質を変える打ち手により、転出超過の拡大に歯止めがかかる(具体的な到達数値は現時点で示せない)
経済県内総生産は農林水産業中心の構造のまま、小幅な増減を繰り返す都城市の行政DXやふるさと納税のように、一部で全国上位にある実績を他分野へ横展開する
宮崎県内の働き方正社員採用中心の構造が変わらず、若手の受け皿が増えない業務委託・フリーランス・複業など多様な働き方が県内で選択肢として定着する

※このシナリオ比較はHALHAREの見解であり、政府・自治体による将来予測ではありません。

行政DXの明暗――都城市は全国上位、県全体の統一指標は確認できず

行政DXについては、宮崎県内に全国レベルの実績を持つ自治体が実在する。都城市は民間調査「自治体ドックランキング2025」(株式会社うるるが総務省「地方公共団体における行政情報化の推進状況調査」を一次データとして独自にスコア化したもの)で、全国1,741自治体中4位(74.4点)。日本DX大賞では3年連続で決勝進出・受賞し殿堂入りしており、全国の市区で初めてマイナンバーカード申請率95%を達成した実績も持つ。

ただし、これはあくまで都城市という一自治体の実績であり、「宮崎県全体の行政オンライン化率が何%か」を示す統一的な一次統計は、今回確認できなかった。県は「宮崎県デジタル化推進計画」のもとで取り組みを進めている段階であり、県内の自治体間で差があることは、都城市の突出ぶりからも推測できる。

発信力の実力――ふるさと納税では全国2位

「宮崎は発信力が弱い」と語られることが多いが、寄付という具体的な行動が伴う指標では、必ずしもそうとは言えない。総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和7年度実施)」によれば、令和6年度の都道府県別ふるさと納税受入額で、宮崎県は約582.8億円となり、北海道に次ぐ全国2位だった。市町村別でも都城市が約176.9億円で全国4位(過去10年で5回の全国1位経験あり)、宮崎市も132.4億円で全国8位(中核市では3年連続1位)と、複数の自治体が上位に入っている。

これは公式SNSのフォロワー数のような指標ではないが、「返礼品を軸にしたブランド発信・EC実績」という点では、宮崎は全国でも有数の実績を持つ地域だと言える。

この記事で扱わなかった数値について

宮崎の経済や産業を語る際によく引用される、九州各県のGDP成長率比較(+19.2%・+16.8%等)、県内IT企業数(120社)、県庁IT予算の内訳(82%が維持管理費)、宮崎牛など県産品の中間マージン率、県公式SNSのフォロワー数・YouTube再生数の他県比較、県全体の行政オンライン化率(12%)といった数値については、算出根拠・一次資料を確認できませんでした。そのため事実として扱わず、この記事には掲載していません。裏付けが取れ次第、続報で扱います。

まとめ

①宮崎県の経済規模はここ数年小幅な増加が続いている。②一方で2025年、転出超過の拡大幅は全国最大となり、社人研推計では2050年に人口が約80万人まで減る見込みだ。③産業構造は農林水産業に大きく偏る一方、都城市の行政DXやふるさと納税の実績のように、全国上位に立っている分野も実在する。強みと弱みが混在する現在地を正しく踏まえたうえで、これから選べる方向性を考える必要がある。

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